フリーズドライに向かないものは?

食品でも工業的なものでも、通常のフリーズドライではアルコールなどの有機溶媒を含むものはフリーズドライできない装置があります。まず、冷凍機にいれて凍ることは大前提となります。少量のアルコール含有なら、大丈夫です。ただし注意点がありますので、最後までお読みください。アルコールなどが含まれるものは、先ず、水より先にアルコールが真空中で揮発していきます。真空にしていくと、凍ったものの表面から泡のようなものが発生することがあります。これはアルコールが真空中で沸点に到達し、沸騰し始めたからです。フリーズドライではこのような沸騰現象はできれば避けたいです。出来上がりが荒くなるからです。でも、どうしてもアルコールを事前に除けない場合には、凍らせたものをそのまま全てが乾燥するまでフリーズドライを行います。そこで注意点です。オイル式ポンプでは、真空凍結乾燥機のなかで、除去した氷が捕捉されるコールドトラップという箇所があるのですが、アルコールはここにトラップされません。このコールドトラップは真空ポンプに水分がいかないようにするためで。オイル式ポンプの場合、トラップで捕捉されなかった水分や有機溶媒はポンプに到達し、オイル式ポンプの場合ですとオイルにそれが溶け込み、真空度が悪くなったり、ポンプ内部の腐食につながります。オイルフリーのポンプなら、ある程度の水分やアルコールが入っても大丈夫です。用途に応じてポンプを選ぶことは重要です。また、ヨーグルトやその他の発酵物を凍結乾燥する場合には、食材に含まれる揮発性の酸、例えば酢酸などがポンプに流れ込むので、ポンプの素材が鉄製ですと、腐食につながります。その場合、高頻度のポンプのメンテナンスが必要となります。オイル式は対薬品性であっても、私の経験ではやはり腐食を経験しています。こういう目的にはオイル式真空ポンプは使用しないことをお勧めします。

次に、その他向かないものがあります。それは柑橘類など、揮発性のオイル成分を含むものです。松からでる樹液(松脂:マツヤニ )の中には揮発性のテレピン油という成分が入っていて、呉服のシミ抜きや油絵などにも使われます。このように、植物に含まれる揮発性の有機溶媒は、真空凍結乾燥法では揮発してしまいます。要するに、匂いが飛んでいくということです。したがって、オレンジなどをフリーズドライすると、香りが半減していると思われます。全く飛んでしまうのではないのですが、想像していたものができない可能性もあります。

話はちょっと変わりますが、オレンジジュースには濃縮還元があります。濃縮する時に減圧するのですが、この時にオレンジの良い香りがある程度飛んでしまいます。そのため、トラップに補足された柑橘油成分を、ジュースに戻して匂いをもとに戻すことも行われている場合があります。このように、柑橘類の特有の香り、例えばリモネンなど、減圧に弱く、揮発してしまうと言えます。食材によって適切な乾燥法があるので、ご検討してみてください。

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